世界の特撮ヒーロージャーナル

世界中の特撮ヒーローを紹介します。

月光仮面:アジア的スーパーヒーローの誕生

アメリカで1940年代から50年代初めにかけて公開された特撮スーパーヒーローの映画は、太平洋戦争中は日本国内ではアメリカ映画の上映が禁止されたこともあって、日本では劇場公開されることはありませんでした。

このため日本でスーパーヒーローという概念が普及するのはテレビドラマの『スーパーマン』が1956年に放送が始まってからのことになります。

この『スーパーマン』が視聴者の人気を得たことを受けて、まず映画としてスーパージャイアンツ・シリーズ9作品が1957年から59年にかけて劇場公開され、テレビでは『月光仮面』が1958年から59年まで放送されました。

スーパーヒーローという概念がアメリカから輸入されたものであっても、日本人がスーパーヒーローの登場する映像作品をつくれば日本の文化の影響をまぬがれることはできません。スーパージャイアンツはその外見からもわかるようにアメリカのスーパーヒーロー、スーパーマンの影響が濃厚でした。

これに対して、月光仮面にはむしろ日本とアジアの要素が濃厚です。 まず、「月光仮面」という名前が月光菩薩にちなんだものです。次に、月光仮面が正義の味方だという位置づけが月光菩薩薬師如来の脇侍であることに倣っており、月光仮面は正義そのものではなく正義を助ける存在だとされています。第三に、月光仮面の理念が「憎むな、殺すな、赦しましょう」だということです。これは東洋的な正義観だといえましょう。第四に、主題歌「月光仮面の歌」(「月光仮面は誰でしょう」ではないほうの歌)の歌詞のなかで「愛と正義のためならば 何で惜しかろこの命」という部分は『法華経』の「我身命を愛さずただ無上道を惜しむ」に由来しています。

以上のことは原作者の川内康範とプロデューサーの西村俊一に仏教という思想的背景があったからそうなったといえます。だが、『月光仮面』の日本的・アジア的色彩を生んだ要因はこれだけではありません。

鞍馬天狗:仮面ヒーローの原点に続く。

 

参考文献 樋口尚文『「月光仮面」を創った男たち』平凡社新書、2008年

 

月光仮面』は、Amazon Primeビデオで全話配信されています。マイ★ヒーローチャンネルに登録するとお得です。