世界の特撮ヒーロージャーナル

世界中の特撮ヒーローを紹介します。

ウルトラマン:世界初の巨大変身特撮ヒーロー

1950年代から60年代の半ばまで日米で誕生した特撮ヒーローはすべて等身大のヒーローでした。世界初の巨大特撮ヒーローは1966年7月4日から日本でテレビ放送が始まった『マグマ大使』です。ただ、マグマ大使はロケット人間(ある種のロボットだといえます)で変身はしません。だから、変身ヒーローとはいえません。したがって、世界初の巨大変身特撮ヒーローは日本で同じ年同じ月の17日からテレビ放送が始まった『ウルトラマン』です。

それでは、世界で初めてのタイプの特撮ヒーローはどのようにして誕生したのでしょうか。

ウルトラマン』は人気番組『ウルトラQ』の後継番組として企画されました。『ウルトラQ』ではほぼ毎回怪獣の登場することが視聴者に好評だったので、番組の企画会議では当初正義の怪獣を登場させ怪獣同士の戦いを番組内容にするという案が提出されていました。しかし、主人公が怪獣という案には反対意見が多く、主人公はスーパーマンのようなヒーローにするという案に変わりました。そこへ、別番組『WOO』の地球人に友好的な異星人が活躍するというアイディアが流用されて、ベムラーというヒーローがうみだされました。ところが、ベムラーのデザインは怪獣に近いもので、ヒーローに見えるような姿ではありませんでした。そこで、デザインがやり直しになり、名前も「ウルトラマン」に改められ、現在知られているようなウルトラマンというヒーローが誕生しました。

ウルトラマンが新しかったのは巨大変身ヒーローだということだけではありません。この巨大変身に付随して変身アイテムを登場させたことも画期的でした。ウルトラマンより前の特撮ヒーローは変身の原理やプロセスの描写・説明がなく、人知を超える不思議な力でいつの間にか変身しているというパターンが大半でした。キャプテン・マーヴェルは魔法で変身、バットマンとスーパーマンは変身といっても一種の衣装替えですから変装に近い。日本の特撮ヒーローはそもそも変身のプロセスが描写されることはなく、変身後の姿が画面に突然現れていました。

このような状況でも、等身大の特撮ヒーローの場合、視聴者はスーパージャイアンツ、月光仮面、遊星王子、七色仮面ナショナルキッドと同じタイプの特撮ヒーローを見続ければ慣れてしまって特撮ヒーローの変身とはそういうものだと思うようになったのでしょう。

しかし、ウルトラマンの変身は身長2メートル足らずの人間が身長40メートルの巨人に変身するという前例のないものです。いくらフィクションとはいえ、視聴者にこの新しいタイプの変身を受け入れさせる工夫がなければ、こんな変身は単なる絵空事としか思われず視聴者を興ざめさせることになってしまいます。

そこで、円谷プロが考え出したのが変身アイテムとしてのベーターカプセルです。科学特捜隊のハヤタが懐中電灯のような形をしたベーターカプセルの赤いボタンを押すと、ベーター線がカプセルの発光部から発生し、このベーター線がハヤタの周りを渦巻き状に包みこむことによってウルトラマンに変身するのです。

このようなプロセスを映像できちんと描写することで、科学的な理屈はともかく心理的には視聴者を納得させることに成功しているといえます。そして、変身アイテムを使った変身というのが世界初のことなのです。