世界の特撮ヒーロージャーナル

世界中の特撮ヒーローを紹介します。

特撮ヒーローとスーパーヒーローはイコールなのか

日本で代表的な特撮ヒーローといえる、ウルトラマン仮面ライダースーパー戦隊をみれば、特撮ヒーローとは特撮を使って実写化されたスーパーヒーローだといえそうである。しかし、そう単純な話ではない。

鈴木美潮昭和特撮文化概論 ヒーローたちの戦いは報われたか (集英社文庫)』では、「特撮ヒーロー」という単語は特に定義されることなく意味は自明なこととして使われているのだが、同書の巻末に「昭和特撮ヒーロー作品リスト」(全104作品)があり、彼女が考える特撮ヒーローがどういうものなのかがわかる。このリストに載っている特撮ヒーローの中に先に紹介した、(1)アイデンティティを示す本名とは別の呼び名をもち、(2)同じく日常とは違う特徴的な身なりをし、(3)スーパーパワーを発揮して、(4)世のため人のためになる無私の使命を果たす者というスーパーヒーローの定義から外れるものが、以下のように20作品あるのだ。

まず、1959年から翌年にかけてテレビ放送された『鉄腕アトム』の鉄腕アトムは本名とは別のヒーローとしての呼び名をもたず、ヒーローとして行動する際に日常とは違う別の姿になるのではない。これと同様なのが、1966年から翌年にかけてテレビ放送された『マグマ大使』のマグマ大使、1967年から翌年にかけてテレビ放送された『ジャイアントロボ』のジャイアントロボ、1972年にテレビ放送された『レッドマン』のレッドマン、1972年から翌年にかけてテレビ放送された『行け!ゴッドマン』のゴッドマン、1973年から翌年にかけてテレビ放送された『ダイヤモンド・アイ』のダイヤモンド・アイと『行け!グリーンマン』のグリーンマン、1974年から翌年にかけてテレビ放送された『行け!牛若小太郎』の牛若小太郎、1975年から翌年にかけてテレビ放送された『アクマイザー3』のイビルとガブラ、1977年にテレビ放送された『大鉄人17』のワンセブンだ。

次に、1960年にテレビ放送された『海底人8823』の8823(ハヤブサ)はヒーローとしての呼び名はあるが、ヒーローとして行動する際に日常とは違う別の姿になるのではない。これと同様なのが、1967年にテレビ放送された『キャプテンウルトラ』のキャプテンウルトラだ。

第三に、1967年から翌年にかけてテレビ放送された『仮面の忍者赤影』の赤影は本名とは別のヒーローとしての呼び名をもたない。これと同様なのが、1969年にテレビ放送された『魔神バンダー』のバンダー、1973年にテレビ放送された『ロボット刑事』のKだ。

第四に、1960年にテレビ放送された『鉄人28号』の鉄人28号と『怪獣マリンコング』のマリンコング、1973年にテレビ放送された『ジャンボーグA』のジャンボーグAとジャンボーグ9と『スーパーロボット レッドバロン』のレッドバロン、1974年から翌年にかけてテレビ放送された『スーパーロボット マッハバロン』のマッハバロンはすべて人間の操縦で動くロボットなので、ヒーローとはいえないだろう。

以上の20作品を特撮ヒーロー作品として扱っているのは鈴木氏だけではなく、講談社発行の『キャラクター大全 特撮全史』シリーズでも同様の扱いである。したがって、この20作品を単なる例外として放置するのは適当ではなく、特撮ヒーローの定義を見直したほうがいいと思われる。(1)普通の人間の名前とは違う名前をもち(本名とは別の呼び名を持つことが多い)、(2)人間の通常の姿とは違う姿で行動し、(3)スーパーパワーを発揮して、(4)世のため人のためになる無私の使命を自分の意思で果たし、(5)特撮を使って実写化されたキャラクター、という定義がいいだろう。

定義の見直しに加えて、 ヒーローの種類を表す名称と映像作品のジャンル名とを区別する必要があると思う。「特撮ヒーロー」という単語は従来この2つの意味で使われており、このことが誤解または混乱の原因になっていると思われる。このブログでは、「特撮ヒーロー」という単語を先に定義したヒーローの種類を表す名称としてのみ用い、特撮を使って撮影されたドラマという意味の映像作品のジャンル名としては、「特撮ドラマ」という用語を使い、特撮ヒーローが活躍する特撮ドラマを「特撮ヒーロードラマ」と呼ぶことにする。『鉄人28号』、『怪獣マリンコング』、『ジャンボーグA』、『スーパーロボット レッドバロン』、『スーパーロボット マッハバロン』は、特撮ヒーローは登場しないが特撮ドラマではある。