世界の特撮ヒーロージャーナル

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光速エスパー:世界初の強化服着用特撮スーパーヒーロー

ウルトラマンにくらべれば知名度は落ちますが特撮ヒーロー史上重要な作品が1967年からテレビで放送された『光速エスパー』です。

光速エスパー』より前のスーパーヒーローの変身スタイルとしては、キャプテン・マーヴェルのように魔法で変身、バットマンとスーパーマンのように衣装替えで変身、ウルトラマンのように変身アイテムで変身と、3つのスタイルがありました。これに『光速エスパー』は新たに強化服着用による変身というスタイルを加えたのです。これは特撮ヒーローとしては世界初のことです。アメコミでは1963年に発表された『アイアンマン』がありますが、これが映画になり劇場公開されたのは2008年です。

光速エスパー』では中学生の東ヒカルが叔父の朝川博士の開発した強化服を装着してエスパーになり地球を侵略する異星人と戦います。そして、この強化服によりヒカルは次の7つの能力を獲得します。(1)物体を引き付ける吸引能力、(2)光速飛行のできる光能力、(3)残像を見ることができるコンピュータ能力、(4)自分をミクロ化できるスモーリング能力、(5)テレパシー(正確には超高度な視聴覚と通信能力)ができるテレ能力、(6)熱線銃の熱能力、(7)冷却銃の冷能力。

それでは、強化服による変身というアイディアはどのようにしてうまれたのでしょうか。『光速エスパー』原作者の漫画家あさのりじによると、発想の源は「タンクタンクロー(鉄球型の甲らをまといカメのように首手足を出し入れできる上に色々な新兵器を球の中から自在に取り出すスーパーマンサムライ)」(『月刊OUT』6月20日号増刊『ランデヴーコミック 2』みのり書房、1978年)だといいます。

『タンク・タンクロー』は雑誌『幼年倶楽部』に1934年から1936年にかけて連載された阪本牙城の漫画です。タンク・タンクローは8つの丸窓のある丸い鉄球を身にまとい、丸窓から頭や手足のほかに、刀やピストル、大砲などの武器を取り出し、また、翼やスクリューなども出して、陸海空を自由自在に飛び回ります。タンク・タンクローの正体は作中では明らかにされなかったので、彼がロボットなのか、それとも特殊な装備を身にまとった人間なのかはわかりません。が、いずれにせよ、このキャラクターが強化服を着たヒーローの原点だといえましょう。

強化服(パワードスーツ)というアイディアが世界で初めて登場したのはハインラインSF小説『宇宙の戦士』(1959年)です。この小説の日本語版が出版されたのは1967年、雑誌『S-Fマガジン』に抄訳が掲載されたのは1961年です。あさの氏は1964年に東芝から依頼をうけて同社のマスコットキャラクターとしてエスパーをデザインし、漫画の雑誌連載は1966年から始まっています。エスパーの誕生に当たって『宇宙の戦士』からの直接的な影響があったかどうかはわかりません。

光速エスパー』でエスパーの強化服の色は通常首の周りが黄色で残りの部分は青です。ところが、第3話でエスパーがミクロ化した時、強化服の色が変わり、首の周りが赤色で残りの部分は黄色になりました。この変化はエスパーがミクロ化したことを視覚的にわかりやすくする演出だと思われます。

のちの特撮スーパーヒーロー作品ではスーパーヒーローが戦い方によってその姿を変えるフォームチェンジという現象がみられるようになります。エスパーの強化服の色変化はこのフォームチェンジというアイディアの原点だといえます。