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『仮面ライダー鎧武』のミサイルはどういう性格の兵器なのか(改訂版)

『仮面ライダー鎧武』の「戦略ミサイル」は核兵器とは限らないという記事では、あの「戦略ミサイル」が核兵器ではない可能性があることを指摘しただけで、核兵器か否かという結論は出していなかった。この記事ではその結論を書く。なお、「戦略ミサイル」と括弧書きにしているのは、あのミサイルが戦略ミサイルだというのは劇中でまだミサイルの実物を見る前に登場人物の呉島貴虎がそのように判断したということであって、本当に戦略ミサイルかどうかという点について改めて論じる必要があると考えるからだ。 筆者の結論を先に述べれば、あれは通常弾頭を搭載した巡航ミサイルだったというのが妥当だと思う。以下、こう考える理由を述べる。 まず、あのミサイルの飛行経路が弾道ミサイルの飛行経路というよりは巡航ミサイルのそれに近いからである。ロシュオの発言では、あのミサイルは四方の海から来たそうだ。あのミサイルが弾道ミサイルであれば、空から落ちて来るという表現になると思われる。ただ、この発言は筆者とは別の解釈もありうるので、この理由は決定的なものではない。 次に、あのミサイルの形状が弾道ミサイルの形状というよりは巡航ミサイルのそれに近いからである。弾道ミサイルは攻撃目標の近くに来た時は分離された弾頭だけの状態になる。この弾頭の形状は円錐だ。劇中に登場したミサイルの形状はペンシル型(円柱の上に円錐が載った形)で翼があった。これは巡航ミサイルの特徴だ。 第三に、核ミサイルにしては数が多すぎたからである。劇中に登場したミサイルは数十発。現在の核ミサイルは核弾頭1つだけでその威力は広島型原爆を上回る。だから、1つの目標を破壊するのに、数十発も核ミサイルを撃つ必要はない。通常弾頭であれば、あれだけ多くのミサイルが発射されても不自然ではない。 第四に、作戦の目的から考えると、通常弾頭の巡航ミサイルが最適だと考えられるからだ。巡航ミサイルは弾道ミサイルよりも命中精度が高く、いわゆるピンポイント攻撃が可能だ。映像を見る限り、あのミサイルはユグドラシルタワーをピンポイント攻撃しようとしていたように思われる。通常弾頭の巡航ミサイルなら、ピンポイント攻撃が可能で被害も限定される。まだ一般市民が沢芽市内にいる状況でミサイル攻撃がなされても、一般市民の被害が最小限にとどまれば、最小限度の犠牲で人類全体の脅威を取り除いたということができ、外交面でのマイナスの影響や世論のネガティブな反応もかなりの程度抑えられるという計算が為政者側としては成り立つ。 以上のような理由から、筆者はあのミサイルは通常弾頭を搭載した巡航ミサイルだったと考える。ただ、このようなミサイルは普通戦術ミサイルに分類されるので、あのミサイルを戦略ミサイルと言っていいのかという問題がある。もっとも、作戦の目的がオーバーロードを全滅させるという戦略的な目的なので、戦略ミサイルと言ってよいという解釈もありうるだろう。 参考のために、巡航ミサイルを映した動画を付す。 6月24日追記以上は放送された映像を観て、これを分析・考察して出た結論を書いたのだが、テレビ朝日公式サイトで放送後に更新された第34話のストーリーを見ると、「世界は人類に宣戦布告したオーバーロードを粉砕するため、沢芽市ごと破壊しようと無数の戦略ミサイルを打ち込んできた。沢芽市は全世界から見捨てられた…。」と書いてある。 こうなると、あのミサイルが戦略ミサイルだということは製作者の公式見解ということになり、筆者が第四の理由で述べたことは誤りだということになる。 しかし、これでも第2・第3の理由で述べたことは否定されず、ミサイルの数が数十発どころか無数ということを考慮に入れて、あの戦略ミサイルが弾道ミサイルと巡航ミサイルのどちらなのか、核ミサイルと通常弾頭のミサイルのどちらなのかという点について判断すると、やはり通常弾頭を搭載した巡航ミサイルだったと思われる。人口20万程度の地方都市を壊滅させるには核弾頭であれば多くても数発で十分だ。通常弾頭だからこそ無数と言うほどの数が必要だったのだろう。 さらに言えば、無数の数の核弾頭を爆発させたら、地球規模での放射能汚染や核の冬が起こる可能性が高い。核保有国がこのようなリスクを冒すだろうか。6月29日追記6月29日に放送された第35話であの戦略ミサイルはアメリカが発射したものだとわかった。だとすれば、第34話のミサイルは核ミサイルだったということになる。だが、そうなると、番組内の映像表現が不正確だと言わざるを得ない。